SnK JOURNAL # 2

JOURNAL # 1 を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。

早く次が読みたいとの嬉しいメッセージも多く、予定よりも早く # 2 に着手し、書き上げました。

いよいよ、2024年のハイライトでもある SOUI and KUFU のローンチ、そして出展後に多くのお問い合わせをいただいた、2025年にデンマーク・コペンハーゲンで開催された 3daysofdesign 出展までの道のりを振り返っていきたいと思います。

 

2024年9月。

私は、佳境を迎えていました。

デザインやディレクションの兼ね合いで、当初の予定より1ヶ月半も後ろ倒しになっていたブランドづくり。

製品開発に伴う試作の検証、商品化に向けた各種調整、関連資材やパッケージ類の準備。
そして、思い出すだけで汗がにじむ真夏の物件探し。

どれもがお盆休みを挟んでピークを迎え、休む間もなく駆け抜ける日々でした。

なかでも最大の焦りは、物件探しでした。

ブランドづくりを終え、製品が完成しても、実物をお披露目する場所がなければ意味がない。

オンラインショップから小さく始める選択肢も、当初はありました。

しかし、縮小していく国内の家具・インテリア市場を見据えると、それではブランドとしても事業計画としても目標には届きません。

ここはリスクを取ってでも実店舗を構え、ブランド価値を高め、国内外の市場に存在感を示していく。

そして何より、自分の大切な製品をお客様に直接見て、触れてもらえる場所をつくる。

そう決意し、店舗物件を探し続けました。

一時期はコロナ禍で空き店舗が目立っていた都心のエリアにも活気が戻り、人気エリアの賃貸価格は高騰していました。

程よいサイズで立地の良い物件はことごとく埋まり、苦戦が続きます。
時には商業エリアとは言い難い立地の物件まで内見しました。

それでも探し続けるなかで、状況は次第に好転。
ついに知人の紹介で、稀有な物件と出会います。

 

私の世代にとって、家具やインテリアといえば青山エリア。

現在も国内外のブランドのショールームやショップが立ち並びますが、かつてはさらに多くが集まり、カルチャーの詰まったカフェも点在していました。

その青山エリアの一角、南青山 2丁目。

外苑のイチョウ並木から程近く、表通りから少し入った路地裏という立地。

その空気感は、SOUI and KUFU が持つ、上質なインテリアブランド( クオリティ・配色・素材展開 )と、ストリートブランド( デザインソース・背景 )の要素を併せ持つスタイルと、高い親和性があると感じました。

コンパクトながら、ブランド名の通り“創意工夫”すれば、ここはきっと面白い空間になる。
最初の内見で、そう直感しました。

もともと事務所貸しだった物件なので、不特定多数が出入りする店舗としての運営許可は下りませんでしたが、予約制ショールームとして運営する許可を、その物件としては初めて得ることができました。

「こんな好物件はもう出ない」——そう思い、即決で契約。

その日のうちに空間デザインに着手していました。

賃貸物件のため、壁・床・天井に手を加えると原状復帰が難しい。

そこで内装には触れず、製品と同じ白樺の間伐材( エコロジープライウッド )や左官を用いて、自立式の間仕切りや什器を設計・デザインし、製作を急ぎ依頼しました。

 


2024年10月。

ショールームにはファーストロットの製品、大量のパッケージや印刷物が次々と届き、ストックルームはあっという間に満杯に。

並行して自分で設計した什器を空間に組み込み、急ピッチでショールームの準備は進んでいきました。

連日の整理とセッティングで身体も限界寸前。
家族のサポートがなければ倒れていたと思います。

丸一日休んだ日が思い出せないほど、時間は一気に過ぎていきました。

10月末頃には、メンバーの協力により、ブランドサイト、オンラインショップ、SNSアカウントもなんとか完成。

備品の買い出しにも奔走しながら、ローンチに必要なものがようやく揃いました。

これまでクライアントワークとして店舗やブランドの立ち上げに関わってきましたが、そのすべてを自分主体で行うのは初めての経験。

振り返れば、想像を超える数のタスクでした。

世の中には、数多の企業やブランドがあります。
しかし、そのどれひとつとして他人事では成り立ちません。

相当な熱量がなければ生まれず、存在し続けることもできないのだと、改めて実感しました。


2024年11月。

14日にプレオープン、20日にグランドオープン。

ついに、SOUI and KUFU は世界へとローンチされました。

お祝いに駆けつけてくれた家族や友人、知人。
南青山の小さなショールームには、本当に多くの方が足を運んでくださいました。

ブランドや製品の説明に真剣に耳を傾け、組み合わせを楽しみ、レコードで音楽を聴きながら、コーヒーやお酒を片手に過ごす時間。

それは、夢のような日々でした。

何より嬉しかったのは、自分で立ち上げたライフスタイルブランドの製品が、家族や友人、知人の自宅やお店で使われている光景を目にしたときです。

世界の暮らしへ届けたいと SOUI and KUFU を生み出したあの日に思い描いたワンシーン。
その景色の片鱗が現実と重なり、思わず涙がこぼれました。

 


2024年を駆け抜け、年末年始の休息も束の間。

創業時から掲げていた目標のひとつ、デンマーク・コペンハーゲンで開催される 3daysofdesign への出展申し込み期限が、目前に迫っていました。

ブランドのローンチ、ショールームのオープン直後に、いきなり大きな舞台を目指す。
その決断には、周囲から心配や反対の声、時には批判もありました。

それでも、事業計画と中長期の戦略を冷静に見つめ直したとき、私の中に他の選択肢はありませんでした。

デザインとサステナビリティを主軸に据える 3daysofdesign への出展なら、これ以上に相応しい舞台はない。
そう確信していたのです。

日本で一般的に語られる“北欧”や“北欧家具”の、やわらかく温かなイメージ。

けれど私が惹かれてきたのは、その奥にある思想や価値観、そして多様なカルチャーが共存する姿でした。

北欧のデザインや文化に内包されたそうしたスピリットを、自分なりの解釈でブランドの輪郭と重ね合わせる。

この出展は、その挑戦を世界に示す機会になるはずだ。

すでに資金の多くを投じた後でしたが、さらにアクセルを踏み込み、出展を申し込みました。

経営判断としては、まさに綱渡り。
それでも、進む以外の選択はありませんでした。

 

2025年2月。

不慣れな手続きをすべて英語で完了し、審査結果を待ち続けました。

ほどなくして、3daysofdesign から審査通過の知らせが届きます。

無事、通過。

2025年時点で、日本から出展しているのは国内大手の老舗メーカーや主要ブランドが数社のみ。

立ち上げ間もない日本発の無名のライフスタイルブランドとしては、異例ともいえる結果でした。

 

しかし、安堵も束の間。
そこから、また痺れるような日々が始まります。

初めての海外送金。
キービジュアルの撮影と提出。
そして最大の壁が、出展場所の確保でした。

3daysofdesign は、大きな展示会場でブース出展する形式ではなく、コペンハーゲンの街中の店舗やギャラリー、公共施設などを活用して開催されます。

すでに常連ブランドが好立地を押さえており、後から参加するブランドにとって場所探しは容易ではありません。

ショールームやオフィスでの仕事に取り組みながら準備を進め、帰宅後は毎晩 Google Map のストリートビューで、デンマーク・コペンハーゲンの街を歩き続けました。

30軒以上のお店やギャラリーへ連絡し、現地に住んでいた友人にも足を運んでもらいながら探しましたが、円安と物価高の影響で中心エリアの会場費は想像以上。

表現に適した空間と費用のバランスが取れる出展場所の確保には、結果的に1ヶ月を要しました。

せっかく厳正な審査を通過したのに、理想的な場所が見つからない。
このまま出展できないのではないか。

そう思い始めた、期限の3日前。

中心エリアのひとつ Frederiksstaden で、30年続く一軒のお店と出会います。

世界的に人気のブランド FRAMA のすぐ近く。
それでいて、これまで一度も会場として貸し出したことのない、奇跡的な場所でした。

オーナーにこれまでの経緯と想いを真剣に伝えると、快く受け入れてくださいました。

丁寧に条件をすり合わせ、好立地でありながら非常に良心的な会場費で契約が成立。

こうして、2025年の年明けから3ヶ月。
参加と出展場所が正式に確定しました。

残るハードルは、展示用の製品準備と海外輸送、そして万全の体調で現地へ辿り着くこと。

6月に開催が迫る 3daysofdesign 。

次回 # 3 では、デンマーク・コペンハーゲンでの実体験と出会いを振り返ります。

JOURNAL # 2 をお読みいただき、ありがとうございました。

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