SnK JOURNAL # 0

いま、こうしてこのジャーナルを読み始めてくださったあなたに出会えたことを、心から嬉しく思います。

設立から2年、ローンチから僅か1年余りの SOUI and KUFU(ソウイアンドクフ)を、どこかで見つけ、興味を持っていただけたことに、まずは感謝を伝えさせてください。

このジャーナル #0 では、創設者でありデザイナーの 関根 将吾 / SHOGO SEKINE が、ブランドや主要な製品が生まれるまでの道のりを振り返りながら、デザインの軌跡を書き記していきます。

 

生まれてきてくれて、ありがとう。
それが、SOUI and KUFU にかけた最初の言葉でした。

私は、いわゆるデザイン業界と呼ばれる世界に身を置き、いくつかの企業を渡り歩きながら、国内外の空間やインテリアに関わるクライアントワークに、裏方として長らく携わってきました。

どこに身を置いていても、心のどこかで社会や組織の仕組みと価値観のズレに違和感を覚えたり、他者からの評価を気にして比較してしまったりと、心配や不安を抱えながら過ごす日々も多く、都会での生活に少し疲れていたのかもしれません。

多忙な日々の合間で自分のデザインに取り組んでみても、「これはデザインではなく、ただのキュレーションや編集なのではないか」という感情が拭えず、アナーキーでレボリューショナリーな表現に惹かれていた若い頃のアウトプットと同様に、そこにあったのは『デザイナーズ』と名のつく何かを夢見た、エゴの塊のような表現だったことを思い出します。

こうした迷いや違和感を抱えながら、作品を公表することも、目標としていたブランドを立ち上げることもできないまま、月日は流れていきました。

2020年、世界はコロナ禍という未曾有の危機に直面します。

これまで当たり前だと思っていた日常が根底から覆される出来事が続き、この数年の間に、私自身も含め、大切な人を亡くされた方も多くいらっしゃったと思います。

もともと、微力ながらデザインを通して社会貢献や地球環境に意識を向けてきましたが、東日本大震災を経てその思いはさらに深まり、コロナ禍を通して、価値観が変わっていくのを、頭だけでなく心身で実感するようになりました。

「何か自分にもできないだろうか」——

自己満足や一度きりのアクションではなく、自分の人生や生き方としっかり結びついた事業として、取り組める何かはないだろうか。

閉鎖的になっていく世界の中で、そんなことを考え続けていたある日、当時住んでいた家の隣にある公園で、印象的な光景を目にします。

キャンプグッズやアウトドアギアを持たない多くの人たちが、室内用のテーブルや椅子を家から持ち出し、公園のいたる所でコーヒーを淹れたり、お酒を飲んだりしながら、食事や趣味の時間を楽しんでいたのです。

非常事態の最中にあっても、日々の暮らしを工夫しながら楽しもうとする、その姿勢と逞しさ。

コロナ禍がもたらした不可抗力によるものなので、不謹慎と受け取られるかもしれませんが、東京では稀なその光景は、長い冬を越えて太陽の光が溢れる季節、公園で思い思いに過ごすヨーロッパの人々の姿と重なりました。

私にとって、それはとても豊かで、美しい風景だったのです。


この体験をきっかけに、『創意と工夫を愛する生き方』と『ひと手間を楽しむことの尊さ』に改めて焦点があたり、インテリア用品や家具の定義と境界線をもっと曖昧にした、その人のライフスタイルや気分に寄り添える製品をつくれないだろうか、と考えるようになります。

それを実現するためには、組み立てや分解が容易で、屋内外で気軽に持ち運べること。そして、壊れにくいことに加え、個々の好みを反映できる余白があること。さらに、地球環境に配慮された素材であることも欠かせません。

そうした条件を満たすことができれば、長く愛され、使い続けてもらえるプロダクトになるのではないか——そんな思考が、ゆっくりと、しかし確実に輪郭を帯びていきました。

クライアントワークとは異なり、他者からの希望や要望ではなく、自分の興味や直感に素直に従いながら手を動かす、とてもオーガニックなアプローチを繰り返す日々。

時折、公園を散歩しながら構想を深め、2023年を迎えたある日、現在の原型となるデザインが生まれます。

それが、DISC TYPE – ONE(サイドテーブル)です。

コロナ禍という状況もあり、自宅で仕事をする時間が増えたこと、そして私自身が音楽を好み、レコードをかける時間も自然と増えていたことも、このプロダクトのデザインに影響しています。

その日に聴きたいレコード盤をターンテーブルへセットするように、テーブルの天板を自由に交換できたら面白いのではないか。

そんな発想から、“DISC”と呼んでいる円形天板のディテールや、“OPTION DISC”との組み合わせが導き出され、自分の好きなカルチャーが自然と融け合っていくのを感じました。

これは、私にとって初めての体験でした。

レコードにおける一連の行為をサンプリングし、スケールと機能をデザインとして付与していく。それは、単なるエゴの投影とは明らかに異なるアプローチだったのです。

製品の機能や構造のイメージに、デザインのベースとなるディテールが重なり、輪郭を帯びていた全体像が、ある瞬間ふっと立ち上がりました。

天板の✕型開口部に、2枚の台形プレートを組み合わせた脚部を差し込むことで、アイコニックな突起部が現れるこの構造は、世界的にも類を見ない新しくユニークなものでした。

その構造と、スケートボードやサーフィンなど好みの横乗りカルチャーを起点に、同じデザインプロセスやアプローチを試みて生まれたのが、多機能型の DECK TYPE – TWO(スツール・シェルフ・テーブル)です。

結果として、2つのデザインが、特許庁の意匠権を取得することになります。

これらのプロダクトは、
私にとって「つくること」をもう一度信じさせてくれた存在でした。

今までとは異なるデザインプロセスから生まれたこと。
そして、それがオリジナルであると証明できたこと。

『デザイナーズ』と名のつく何かではなく、比較や競争とは異なる場所に立てる可能性を、この製品は秘めている——そう感じたとき、このプロダクトを軸にブランドを立ち上げようと、自然に決意していました。

国内のインテリア用品や家具の多くは、メーカーを主体に新しい製品やブランドが生まれ、自社工場での生産から在庫管理、そして直販や卸売までを一貫して担う形式が主流です。

それに異を唱えたいわけでも、対立したいわけでもありません。ただ、メーカーとも作家とも異なる、「デザイナー主体だからこそできるインディペンデントなブランドの在り方」を模索し続けてきました。

国外では、各世代のデザイナーが主体となり、ファッションブランドに限らず、インテリアや家具を軸としたブランドを立ち上げ、起業という形で社会と接続している例が数多く見られます。

それは、日本でもきっとできる——そう信じて、まずは一人で、SOUI and KUFU Inc.を立ち上げました。

前例がほとんどないため、事業計画の段階でも、材料の調達や製作環境、原価との折り合いなど、現実的な課題は少なくありませんでした。
クラウドファンディングや出資を受ける道も選ばず、手探りで進んだ分、資金面でも苦労はありました。

それでも、ブランドの軸だけは見失わず、ブレることなく、素直な歩幅でここまで辿り着けたと感じています。

将来的には、利益の一部をファミリールーツである湘南の海や北海道の森へ還元すること。
そして、インテリア用品や家具を軸としたライフスタイルブランドが、日本からさらに多く生まれていくための土壌づくりにも、少しずつ関われたらと考えています。

SnK JOURNAL #0 は、ここまでにしたいと思います。

#1 以降では、ブランディングや製品化を経てローンチに至るまでのエピソード、3daysofdesign 出展の裏側、新作に向けたデザインと製品開発の過程などを、少しずつ書き記していく予定です。

これからも、持続可能な素材を中心に、シンプルかつユニークな表現を用いて、末永く愛用できる製品を生み出していきます。

そして、このプロダクトがそうであったように、誰かの「つくること」や「暮らしを楽しむこと」に寄り添い、小さな喜びや発見を届けられる存在であり続けたいと思っています。

このジャーナルを通して、少しでもその過程や想いを共有できれば嬉しいです。

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